連載よみもの【しあわせ・ざ・おなか】
最終章◆後編
窓一つない分娩室。今が何時なのかすら分からない。
でも夜が明けたことを教えてくれたのが、朝食が出てきたことと、看護婦さん達が申し送りしてたことだった(苦笑)
朝食なんて出されても食べれないっちゅ〜ねん。
そして申し送りが終わった看護婦さんたちは、妊婦さんがどんなに悶えてても変わりなく仕事をこなす。普通に分娩室の掃除してるし。
そういえば、今まで何人かの妊婦さんが出産を終えてったなぁ。
ウチはまだ産まれないのかなと、疑心暗鬼になってくる。
しばらくして冷たい水が差し入れされた。
まだ起き上がることは可能なので、早速いただいた。
クゥッ〜……うまい!!
水がこんなにオイシイいなんて…。
そして元の場所に置いておいた。
またしばらくして飲みたくなったので、取ろうと思ったら、手の届かないところに置かれていた。
そのうち飲み終わってもないのに片付けられちゃったし(苦笑)
そしてまた痛みと孤独の戦いが始まる。
分娩室に電話が入った。良く聞いてみると、どうやらウチの骨盤のレントゲンのことらしい。
「今それどころじゃないんだよ!キャンセルだよ」って言っていた。
あっ、そうか。今日が骨盤のレントゲン撮るって言ってたっけ。
昼近くになって再び先生がやって来た。
「ん〜。あまり子宮口が開かないね。これ以上長引くと、母体ももたいないかもね。よし、少し(陣痛)促進剤使うか。」
陣痛促進剤ってのは、陣痛が弱い人とかに打つ注射で、それを打つと子宮口が開いてくる。
どうやら自分も微弱陣痛の1人らしく、昨日の夜からほとんど開いてないらしい。
ついに促進剤が打たれ、夕方前までにはついに全開の10cmまでようやく開いた。
ここまで実に14〜5時間が経過していた。
ダンナさんも昨日の夜中からずっと今まで、病院内で今か今かと待ち焦がれている。
そして、その瞬間がいよいよ近づいてきた。
今までまっずく寝ていた分娩台も、出産に向けて形を変えて、下半身にはシートが敷かれ、万全の体制が整われた。
ダンナさんも予防着を着て分娩室に入ってきた。
もう頼れるのは力強いダンナさんの手だけだった。
「ヒッ、ヒッ、で息を止めて!!」
「ハイ、そこでいきんで!」
「力入れないと、赤ちゃん降りて来れないよ!!」
「はい、上手だね。もう一回!!」
こんなやりとりがどれくらい続いただろう…。
「赤ちゃんの頭見えて来たよ!あともう一息だ、頑張って!!」
全身の力を搾り出すようにいきむ。
正直、昨日の夜から寝てないし食事だって摂ってないのに、この力はどこから出てきてるんだろう?
赤ちゃんに会える希望から?
それともやけくそ?
火事場の馬鹿力とは良く言ったもんだ。
まさにそれに近いだろう、この力は。
「はい、あと一息!!」
…なにかが抜けたような感じがした。
「良く頑張ったね〜。元気な女のコだよ」
もうその言葉しか覚えてなかった。ただただ無我夢中で。
確かなことは、そこに力強いダンナさんの手が、そして私たちの赤ちゃんが誕生したこと。
こんな体の小さい自分が普通分娩で産めたことは、自分自身がビックリした。
でもそれ以上に、先生や看護婦さんたちの方がビックリしたらしい。
グチャグチャに号泣する自分。
相変わらず爽やかな笑顔のダンナさん。
「よぅ頑張ったな」
この瞬間に、ダンナさんはパパに、ウチはママになったのです。
9月7日(木曜日) 午後4時27分
2482gの元気な女のコを出産。