連載よみもの【しあわせ・ざ・おなか】

最終章◆中編

こうして夜中の1時半過ぎに分娩台に上がった。
そして、真夜中だっていうのに、頑張って病院に掛けつけてくれたダンナさん。実家にも連絡してくれて、のちに親達も掛けつけてくれるらしい。

「大丈夫か?いよいよか?」
「ん〜順調に行けば明日のお昼頃みたい」
「おぉ…」
相変わらずダンナさんは言葉少なだけど、期待と不安が入り混じってるが分かる。

「ちょっと腰さすってよ」
「こうか?」

実はこのシチュエーション、憧れだったんだよね〜(笑)
陣痛に耐える妊婦さん、それを腰をさすったりして支えるダンナさん。

「じゃぁダンナさんはそろそろ出て待っててください」
え?もう行っちゃうの?(涙)
「ガンバレよ」

ここの産院は3つの分娩台があるんだけど、パーテーションでしきられてるだけなのだ。
幸いにも自分がいる場所は廊下側の一番端っこだった。
なので、ダンナさんもいくらか出入りの許可がもらえたけど、他の妊婦さんが来たら出なくちゃいけない。
基本的に立会いなんだけど、入れるのは産まれるほんの少し前だけなのだ。

それにしても分娩室は、ある意味修羅場だ。
隣りの分娩台では、他の妊婦さんの断末魔が…。
「い・た・いぃ〜!!!」
出産ってホントに痛いんだな…と再確認した。
そしてその叫びだけで痛みと恐怖の想像だけが広がっていく。
そう、自分が今経験してる痛みなんて、まだまだ序章にしか過ぎなかったのだ。

時間が過ぎれば過ぎるほど、痛みが増してくる。
分かりやすい表現で言えば、「生理痛のひどい版」ってところだろうか?
とにかく腰が砕けそうに痛いのだ。

そして赤ちゃんに酸素がちゃんといくように、妊婦さんはしっかりした呼吸法をしなくてはいけない。
これが俗にいう、「ヒッ、ヒッ、フゥ〜」っていうラマーズ法だ。
鼻で2回吸って、口で深く吐く。この3拍子の呼吸が上手く出来ないと、お腹から狭い産道を通ってくる赤ちゃんに、充分酸素がいかなくなってしまい、仮死状態になることも少なくないのだ。
しかし痛みがひどく、ハッキリ言ってそんなんやってる場合じゃない。分娩台の上で、ただただ悶え苦しむだけ。
まるで、「まな板の鯉」ってこのことだよ…。

…そうだ!3拍子の歌を何か思い出して、それに合わせて呼吸すれば!

しかし、考えれば考えるほど「慎吾ママ」の歌しか出て来ない。
そうだ、この夏休み、ず〜っとTV見てた時「慎吾ママ」が出てたっけ。
お…恐るべし、入院生活。すっかり洗脳されてるわ。
そんな歌より、早く3拍子の歌を探さなきゃ!!

そうこうしている間にも、痛みは更に増していく。
「痛いよぉ…」と叫ぶしか術はない。本当に痛みと孤独の戦いなのだ。

もうどれくらい時間が経ったんだろう…。

意識が朦朧としてくる。そういえば全然寝ていない。
ウトウトして意識が飛びそうになると、激しい痛みに襲われる。
それで目を覚まし、痛みが去るとまた意識が朦朧とする。
これの繰り返しだ。

ダンナさんどうしてるかな。
もう早く切開しちゃえばいいのに…。
あっ、3拍子の歌、LINDBERGの「LOOKING FOR A RAINBOW」があったっけ…。
そんなことだけを考えていた、分娩台の上の自分。

つづく
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